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 とにかく色々なことがあった一日だった。何から触れていいのかわからないぐらいだ。

 今日の昼過ぎ、彩音から電話があった。澪が病院の前で交通事故に遭ったと言う。澪と彩音は、毎日、澪の母である由比の見舞いへ行っていた。その折に、澪が事故に遭ってしまったらしい。

 俺たち、俺とみりか、沙夜は、慌てて病院へ向かった。外来受付が終了していたので、救急受付から滑り込むように病院へ入ると、すぐに澪のいる病室へと通された。そこは何と由比のいる病室だった。澪は額を擦りむき、大腿部にヒビが入っただけだった。ただ頭部を打っているので、今日は入院して様子を見るらしい。

 大した怪我でなくて良かった。本当に、良かった。

 俺の姿を見た彩音は、泣きながら俺に飛びついてきた。そんな彩音を、澪は心配そうに見ている。でも、澪は由比の側を離れない。そう、もう一つ奇跡が起きたのだ。由比が澪のことを思い出したのである。

 と言うと、少し語弊があるかも知れない。由比は俺に大切な話があると言うので、澪をみりかたちに任せて、部屋の外へと向かった。そこで聞いた話には、正直驚いたが納得もした。すべての謎が解けたのだ。

 由比は、獣人だけがかかる退行症を患っている。それは間違いない。由比はそのため記憶障害を起こしていると言う話だったが、実は記憶や精神状態は冒されていないのだ。実は、澪のこともしっかり憶えていたのだ。しかし、澪のためを思い、ああして記憶が無い振りをしたのだと言う。そして、自分の目の前で澪が事故に遭い、いてもたってもいられなくなって飛び出したそうだ。

 由比の話によると、澪の父親は安っぽいチンピラだそうだ(高瀬からも似たようなことを聞いている)。その父親は、澪が生まれると澪だけでなく由比も疎んじ始め、毎日のように暴力をふるっていた。由比は澪を連れて逃げ出したのだが、あることをきっかけに、その男は執拗に彼女たちを追い続けた。その理由が、本当に胸が悪くなるような話だ。獣人の保護者に政府補助金がおりることとなり、あわてて澪を探し始めたのだ。

 由比が入院すると、何所からともなく現われて澪を戸籍に入れようとした。そこで由比は記憶が無いふりをしたそうだ。澪を守るために。由比は澪の母親だ。そんな状況をずっと続けるのはおかしいし、続けられるはずが無い。澪の事故がきっかけだとしても、今の状況の方が遥かにいい。でも、由比は澪の父のことを恐れている。

 俺は澪たちのもとへ戻って、提案した。これからも澪とずっと一緒に暮らしたいと思うけど、皆はどう思うかと。もちろん、反対するものはいない。由比は泣きじゃくりながら、何度も謝っていたが、勘違いしないで欲しい。別に人助けのためにやっているのではない。皆が一緒だと、皆が楽しい。だから、そう提案しただけだ。

 ちなみに、ひよすけさんも病院に来ており、一緒になって喜んでいた。あんなに身体が弱かったのに、ここまで元気になるとは。

 これから思いもかけない困難に立ち向かわねばならないときが、きっとくる。でも、俺は皆と一緒なら乗り越えられると信じている。奇妙なステップで踊るひよすけさんと澪を見つめながら、そう思った。

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